前回から、親が亡くなったあと自立に課題のあるお子さんが生きていくためのサポートをお話ししています。「親なきあと」相談室の渡辺伸さんによる勉強会の情報です。
今回は、お金の残し方・受け取り方のお話しますが、その前に一つエピソードを紹介します。
子どもが苦労しないよう、できるだけお金を残してあげたい…。そう言って1500万円ほど残し亡くなられた方がいました。お子さんのAさんには知的障がいがあります。親が亡くなった後、Aさんの通帳には1500万円という大きなお金が入りました。作業所に行くためにAさんは毎日同じ道を通ります。いつも通り通勤していると、道で客引きに合いました。上手く言いくるめられてしまったAさんは、客引きに言われるがまま店に行き、お金を払いました。狙いを定めた客引きは毎日のようにAさんを誘い、時には自分達のごはん代まで払わせる事も。最終的にお子さんは親から残された1500万を数ヶ月で使い果たしてしまったそうです。
親が生前に懸命に働いて残したお金も、お子様が使う仕組みを整えていないとこのような悲しい事にもなりかねません。そうならないようお金の残し方・受け取り方はよく考えておく事が大切ですね。お金の残し方・受け取り方には以下のような方法があります
①遺言
②信託
③障害者扶養共済制度
④個人型確定拠出年金(iDeCo)
①遺言
遺言は残された家族による揉めごとを避けるためにも必要です。遺言がなければ、財産は相続人の協議、もしくは法廷相続分で配分されます。
・法廷相続分→配偶者1/2 子1/2
配偶者2/3 父母1/3
配偶者3/4 兄弟姉妹1/4
・相続遺留分→配偶者、子、親には一定の財産を取得する権利があるとされる。
配偶者と子は法廷相続分の1/2、親のみが法廷相続人の場合は1/3
障がいのある子に多く財産を残したい場合は遺言があればそれが優先されます。
しかし、もし兄弟姉妹が遺産ゼロとされていた場合、兄弟姉妹が相続遺留分を要求する事ができ、遺言の額と異なる配分で遺産分配される場合があります。遺言が更なる揉めごとにならないよう、生前に家族全員で話し合っておく事が大切です。
※障がいを持つ子の場合、書類手続きや署名・実印が難しい場合もあります。そのような時は遺言執行人を指定しておけば相続手続書類は不要になります。遺言執行人は個人でも法人でも、家族でも大丈夫です。(金融機関によっては遺言執行人がいても書類手続きが必要な場合も有り)
知識があって遺言を書くのと、そうでないのとではだいぶ違いますね。大切な家族の絆を守る為にも残しておきたいものです。
次回は②信託 についてお話しして行きます。
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