虐待の事がよくメディアに取り上げられる度に「児童相談所の判断は」と不満の声が上がります。痛ましい事件がこれ以上起きてほしくないという気持ちが避難の声になるのでしょう。声を上げる前に児童相談所の現実にも目を向けてほしいと思います。
私が『発達相談支援コーディネーター』の養成講座を受けた際、児童相談所のカウンセラーの話を聞く機会がありました。
児童相談所への通報が入った後、カウンセリングに来る保護者の大半が児童相談所への不信感や怒りを抱えて駆け込んで来ます。カウンセラーはまず保護者の怒りを真っ向から受け止め、延々を苦情を聞くところからスタートします。想像してみて下さい。見ず知らずの大人からもの凄い剣幕で怒鳴られ、罵り、脅される時もある。このようなカウンセリングが夕方から夜にかけて行われる事もあります。これだけで十分心が疲弊してしまいますが、これだけでは終わりません。
カウンセリングで得た情報をもとに、診断、調査、会議を行い対策を対応を決めます。場合によっては一時保護や措置を行う必要があり、その為にはもちろん書類や手続きなど事務作業が必要です。調査は社会診断、心理診断、行動診断、医学診断なども含まれ、時間がかかります。親と子が離れ離れになってしまうのですから、調査は慎重に行われます。保護されるケースはひとにぎりです。中には子どもが保護された事で子どもを取られたと思われる方もおり、更なる怒りを受けなければなりません。
相談はもちろん1件だけではありません。2019年度では川崎市内だけで2368件のカウンセリング件数がありました。市内の児童相談所は3件、単純計算すると各児童相談所で約789件の相談を受けるわけですから、365日全く休み無して働いたとして一日2件以上、このような相談を受けなければなりません。一日で解決するケースなど殆どありませんから、以前受けた相談の対策を引き続き行いながら新しい案件も受けるのです。そして児童相談所の仕事には『市役所や関連機関への援助機能』もありますので、忙しくても市町村から相談を受けた時には研修や相談に出向かわなくてはなりません。
これだけ働いても事件が起きた時に出るのは責任を問う声。
このような現実を知り児童相談所で働きたいと思われる方がどれだけいるでしょうか。児童相談所の職員は現状に向き合い、子どもを守るために毎日身を粉にして働いています。ご意見は色々あるかと思いますが、問うべきは児童相談所への責任ではなく、相談から対策までのシステム・関連機関の連携です。子どもの為に一人の大人ができる事は必ずあります。自分ができる一歩を今この場を考えましょう。
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