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前回はLD(学習障害)のKさんの高校生活についてお話ししてきました。Kさんは書字・読字・計算の学習障害/起立性調整障害/感覚過敏/ADHDの症状があるため、高校で様々なサポートを受けてきました。指定校推薦で大学に合格した彼女ですが、受験の際にも様々な配慮がありました。
●PCの使用
志願理由書など事前提出資料を手書きでなくPC入力を許可された事で不安を軽減する事ができた。当日、小論文作成でもPC利用を許可。PCには読み上げ機能が入っているため、読字がスムーズにできる。また、直接手書きをする事が困難なKさんも他の人と同じ内容の試験を受けられた。
●評定平均の調整
通常4.0以上必要なところ、3.5以上にしてもらう
●ノイズキャンセリングイヤホンの利用
聴覚過敏を和らげるためにノイズキャンセリングイヤホンを着用。
●保護者・当事者・高校・大学とのやりとり
高校生活を過ごしながらKさんの体調に無理のない生活スタイル(学校に通う頻度や時間)を見つける。その現実と志望校での生活をすり合わせる。保護者と当事者でオープンキャンパスへ行き、バリアフリー推進室担当者や学部長へ挨拶。Kさんが配慮申請をする事を印象付けておく。高校から指定校推薦の申請を行う際、受験時に配慮事項が必要な生徒である事を伝え、具体的にどのよう配慮が必要が話し合う。
●合格後に高校から大学への配慮申請
3月末に支援引継ぎ会議が行われる。担任・進路主任・大学のバリアフリー推進室・教務課・一年次ゼミ担当の先生・学生相談室相談員・保護者・当事者が出席し、高校での個別教育支援計画を大学に引き継ぐ
4月~5月配慮依頼文についての面談・作成
10月配慮依頼文完成
→次年度4月に実質的な配慮スタート
高校から大学への情報交換が成されていたからこそ配慮が受け入れられたのが分かります。このような配慮が受けられたのには保護者と当事者がしっかりと自身に向き合い、自分ができる部分と補助が必要な部分を時間を掛けて見極めてきた背景があります。ありのままの自分をさらけだし、人に助けを求めるのは大変勇気のいる事です。周りの人が当たり前にできている事なら尚更ですね。Kさんと保護者は諦めず周囲に言葉を発し続けました。2人の気持ちが人の心を含め、環境をも変えたのでしょう。
少しずつ皆と一緒にできる事が増えたKさんは、学校生活が楽しくなり行事にも積極的に参加するようになりました。大学に行きたいと思うようになったのはこのような心の変化も理由の一つだそうです。配慮を求められた時、思わぬ形であっても受けてみようとする柔軟さを持ちたいですね。
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